※制作中。文章は随時更新されます。

第一章|冬夏の交わり

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第一話:降臨

冬の夜空で楽しく光り輝いていたシリウス。
ある日彼女は、地球という星でアイドル達が楽しそうに輝いているのを見て目を奪われます。
いても立ってもいられなくなったシリウスは、冬を統べるアルデバランに相談しますが、気分屋の彼女は地球へ行く事を許しません。
諦め切れないシリウスは、こっそり秋の星フォーマルハウトの力を借り、幼なじみのプロキオンを無理やり誘い、憧れの地球に行く準備を進めます。
すると冬の友人ベテルギウスが声を掛けてきます。
「お願い、私も連れて行って!」
普段は大人しいベテルギウスが珍しいな。
こうして3人となった冬の一行は、流星群に乗り、空を越え、季節を越え、遥か地球へと向かうのでした。

一方夏の夜空では、ベガとアルタイルも地球という星を眺めていました。
光こそ美しさと信じていたベガは、アイドル達が光に頼らずに美しくある事に衝撃を受けます。
ベガの驚きを見て取ったアルタイルは一言
「面白そうじゃん。行ってみようよ!」
2人は信頼するデネブ姉さんの知恵を借り、天の川に笹舟を浮かべます。
こうしてベガとアルタイルの夏の2人も、笹舟に揺られながら、遥か地球を目指すのでした。

第二話:地上の輝き

やっとの事で地球に降り立った冬の3人、シリウス、プロキオン、ベテルギウス。
初めて近くで見るアイドルグループのライブに圧倒されます。
「こんなに楽しそうに輝けるなんて!」
シリウスがアイドルグループを始めると言い出すのに時間は掛かりませんでした。
驚きと諦めが混ざった顔のプロキオンの横で、ベテルギウスはずっと、目の前のライブに目を奪われています。
(私より遥かに寿命が短い彼女達がなぜこんなに輝けるの?)

離れた席では、歌に合わせて盛り上がるアルタイルと、うっとりとアイドル達の所作を見つめるベガの姿がありました。
「アイドルってカッコイイ!」
「アイドルって美しい!」
同時に言葉を発した2人。アルタイルはベガの手を取って一言「やろうよ、アタシ達も!」
こうして冬空の三つ星と、夏空の二つ星は、地球でそれぞれの輝きを始めるのでした

第三話:重なる空

慣れないアイドルの練習に励む冬の3人。
「しかしベテルギウスがアイドルにこんなに前向きなんて驚いたよね。」
プロキオンの言葉に顔を紅く滲ませるベテルギウス。
「思いついた!」
突然大きな声を上げるシリウス。
「な、何?」
「グループ名よ。それは…『ルミナ・ステラ』。光の星。このアイドルで輝く地球を、私たち星の光でもっと照らしていこうよ!」

「アルタイル、グループ名なんだけど。」
練習中の汗を煌めかせながら振り向くアルタイル。
「うん、それでいいよ。」
「まだ何も言ってないでしょ。でね、アイドル達が美しく輝くこの地球の様に私達も輝きたいの。だから、『ルミナス・テラ』。輝く大地。」

そして運命のいたずら(アイドルフェス実行委員の手違い)によって、2つの空の5つの星は、1つのアイドルグループ『ルミナステラ』として活動をスタートするのでした。

第四話:ルミナ☆ステラ

5人になった『ルミナステラ』。強風の中挑んだ初めてのアイドルフェスは、苦い結果に終わりました。
落ち込むシリウスとベテルギウス、言い争うアルタイルとプロキオン。
ベガは強風で割れたルミナステラのプレートを直しながら、空から初めて見たアイドルライブの事を思い出していました。

窓の外の雨音が落ち着いてきた頃、ベガは話し始めます。
「今日、私達は自分が光り輝く事に必死だった。でも空から見たあのライブは、一人一人の光は弱くても、大きな1つの星になって輝いていた。
ねえ、次は私達も、他の4人の為に輝いてみない?」

次の日のライブでようやくファンの心を掴み始めたルミナステラ。
直りかけのチームプレートの傷口を5人の煌めく星屑で修復し、新たに前に進む事を誓うのでした。
アイドルグループ『ルミナ☆ステラ』として。

第二章|春のゆらぎ

第五話:春の夜空

ー春の夜空にて
「お姉ちゃん、あれ、シリウスさんたちじゃない?」
大好きな星形のチョコレートをつまみながら、デネボラは遠く小さな星を眺めていました。
「…確かに。プロキオンとベテルギウス、あれはベガにアルタイルか。何をしているのだ?」
持っていた書類をいったん棚に収め、スピカは改めてその星、地球に目をやりました。
「台座の上で5人で同じ動きをして。…豊穣の舞い、だろうか?…いや、少し違う気もするが。」
翌朝、スピカは王宮に入るなり、早速レグルスに報告しました。
「何、シリウス達が?なるほど、それで冬空、夏空の光が弱まっていたのか。」
「はい。そのせいか近頃は春の星々の輝きも揃っておりません。号令をかけても、以前のような反応がなく…」
レグルスは春の統治者として、星たちにもっと強く輝くよう命じていたのでした。
「スピカ、お前の姉アークトゥルスは今日は王宮には?」
「申し訳ありません。姉は神出鬼没なもので、わたくしも所在は…。」
スピカと別れた後、レグルスは一人バルコニーで、遠く小さな青い星に目をやります。
(またシリウスか…勝手な真似を…)

「よし、練習終わり!」
地上では5人が次のライブに向けて汗を流していました。
「どうしたのベテルギウス、なんか元気がないけど。」
「ううん、ちょっと疲れただけ。気にしないでシリウス。」
その晩ベテルギウスは一人、公園のベンチに座っていました。
(ごめんなさいシリウス、やっぱり私はみんなの様に強く輝けない…)
春の夜空はどんよりと暗く、涙で滲むのでした。

第六話:背中を灯す光

「…やっと見つけた。」
ベテルギウスが振り向くと、立っていたのはシリウスでした。
「どうしてここが?」
「そのくらいわかるよ、親友だもん。…なんて、本当は公園が赤くぼんやり滲んでいたから。こんな美しい滲み、ベテルギウスにしか出せないでしょ。」
「ごめんなさい、私の光が弱いから、みんなの足を引っ張ってる…。」
「…ねえベテルギウス、地球のアイドルを初めて見た時、あの時感じた事、もう一度思い出しに行かない?!」

「随分揺れてるわね、心の光。」
バルコニーのレグルスが振り向くと、アークトゥルスが立っていました。
「シリウス達が気になるの?」
「春の星たちが私の命に従わないのは、きっとシリウス達の勝手な行動を真似しているんだと思う。アークトゥルス、副官のあなたはどう思う?」
「でもその割には彼女たち、空にいた時よりも一生懸命に美しく輝いてない?ほら」
レグルスは改めて地球を見つめました。
「…気づかなかった。確かに空にいた時はみんなもっとバラバラに輝いていた。」
「まあ、真相なんて本人に聞かないと分からないものよ。」
その晩レグルスは夢の中で、遠ざかる光に手を伸ばしながら、どこまでも闇に落ちていくのでした。

第七話:アカツキ

「はい、オレンジジュース!」
夕暮れのライブステージの前では、お客さんが集まり始めていました。
「ありがとうシリウス。ねえ、今日の『アカツキ』って。」
「そう、私たちが冬空と地球で最初に見たアイドルグループ。今日が…解散ライブなんだって。」
「え?」
「おーいっ!」
シリウスとベテルギウスが声の方を見ると、プロキオンがベガとアルタイルを従えて手を振っていました。
「二人でこっそりデートしようとしたって、ぼくの鼻はごまかされないんだからね!シリウス、罰としてジュースあと3つ!」

5人がジュースを飲み終えた頃、茜色のライトアップと共にアカツキ最後のライブが始まりました。

「…凄い!…凄い凄い凄い!」
ほとばしる汗、胸の奥を焦がす歌声、ベテルギウスが目にしたものは、圧巻の輝きでした。
(最後なのに?…違う、最後だから?…違う、たぶん、今しか、そう、今は今しかないから!)

終焉が近い自分が輝く意味を知ったベテルギウス。
帰り道、4人が思い思いの興奮を語り合う後ろでベテルギウスが見上げた夜空には、流れ星が煌めくのでした。

第八話:地球

「レグルス様、流れ星、というのは、なかなか、乗り…づらい、乗り物ですね。」
スピカはあっちへこっちへと揺らめきながら、何とかレグルスとアークトゥルスの後をついていきます。
「あなたはちっちゃい頃から虫と乗り物だけは駄目ね。」
「む、虫は姉者もでしょう。」
姉妹の会話を風と共に受け流しながら、レグルスは、流れ星の進む先、微かな光を目で捉えます。
(小さく、暗い星だ。あそこに何があるというのだ。)

突然の強い光と衝撃に包まれ、気づくと3人は大地を踏みしめていました。
「着いたか。」
地球に降り立ったレグルスがまず驚いたのが、すれ違う人々の心が発する無数の色の輝きでした。
「…知らなかった。空から見るのと、実際に大地に立って見るのは随分と違うものだな。」
「シリウス達は何を見つけたのかしらね。」
スピカの背中を擦りながら、アークトゥルスが答えます。

やがて3人は1枚のポスターを見つけます。
「…ルミナ☆ステラ…単独ライブ?」
「地球の暦という概念で計算すると…明日、ですかね。」
ようやく乗り物酔いから回復してきたスピカが答えます。
「真相を知るには、自分の目で確かめないとな。そうだろ、副官。」
レグルスが振り向くと、アークトゥルスはソフトクリームを頬張っていました。
「地球のソフトクリーム、濃厚で美味しいわよ。」
その後、口元のクリームをお互いに拭きあった3人。
しかしその晩レグルスが見たのはまたあの夢でした。光に届かず、暗闇の中をどこまでも、どこまでも…。

第九話:まもなく開演です

「無い!私の衣装が無い!」
シリウスの叫びに4人は驚いて顔を向けます。
「どうしよう、開演まであと30分しかないのに!」
「あ、さっき楽屋に来てた双子の仕業じゃない?きっとカストルとポルックスだったんだ。あのいたずらっ子達!」
追いかけようとするプロキオンをアルタイルが慌てて止めます。
「今から追い掛けてももう間に合わないよ。それにシリウス、『30分しかない』、じゃない。まだ『30分もある!』」
アルタイルはそういうと、次々と指示を出します。
「ベガ、君の織物の腕は素晴らしい。アタシが鷲の羽根をできるだけ出すからそれで何とか衣装を作れないかな?」
「…分かった、やってみる!」
「あとは八芒星の髪飾りだけど…シリウス、ベテルギウス、プロキオン。今の君達の絆なら、3人の星屑で作れるはずだ!」
「うん!」「分かった!」「やるぞ〜!」
5人は頷きあうと、早速作業を始めました。

「よしっ!髪飾りは出来た!衣装は?」
「アルタイル、羽根が少し足りないわ。」
「くそー、あと少しなんだけど。」
その時、心地良い風と共に、何枚もの白鳥の羽根が舞い込んできました。
「この羽根は!?」
「アルちゃんベガちゃん、久しぶり!ねえ、笹舟いつ返してくれるのよぉ。…こっそり見てるだけのつもりだったんだけど、シリウスちゃんの泣きそうな顔見たらね。」
デネブに抱きつくアルタイルとベガ。
こうしてデネブ姉さんの白鳥の羽根で最後の仕上げを終えると、5人はステージに向かいます。
(間もなく、『ルミナ☆ステラ』単独ライブ、開演です。)
「よし、行こう!私たちの輝きを届けに!」

第十話(前編):光よ届け!

「いよいよね。」「何が始まるんでしょうか。」
姉妹の会話を無視し、腕を組んでステージを見つめるレグルス。
(間もなく、『ルミナ☆ステラ』単独ライブ、開演です。)
そして華やかな曲とスポットライトに乗って5人が登場します。その瞬間、ステージの、そして会場の輝きが一変しました。
色が、音が、熱が、無数の光のうねりとなって会場を駆け巡り、やがてレグルスの身体を穿きました。
(何だこれは!これが、シリウス達が見つけたもの!)

2曲目、3曲目、4曲目…光のボルテージはどんどん加速し続け、
ルミナステラの5人はステージ上で巨大な一つの星となり、会場は負けじとお客さん一人一人の光で満天の星空を描き出していました。
………いつしか、レグルスは会場の星の一つとなり、心の奥底から光が溢れだすのを止められずにいました。
(光るのが楽しい、輝くのが嬉しい。もっと瞬きたい、もっと、もっと!)

どれくらいの時間が経ったのか、ふと我に返ると、ライブは終わっており、見た事のない興奮顔のスピカと、にこやかに微笑むアークトゥルスの顔がありました。
「どう、答えは見つかった?」
「ああ、ありがとう、副官。早速シリウス達の元に行こう。」
その顔にはもう迷いはありませんでした。

第十話(後編):繋がる10個の星

ライブが大成功し、充実した笑顔で談笑するルミナ☆ステラの5人とデネブ姉さん。
「ふふ、なんか面白そうだから私も入っちゃおうかな。ルミナ☆ステラ!」
「ほんと、デネブ姉、是非入ってよ!」

そこにレグルス、アークトゥルス、スピカが現れます。
「シリウス、君達の追い求めているもの、初めて見させて貰った。
もし良かったらだが、私達3人も『ルミナ☆ステラ』に入れて貰えないだろうか。
私もあんな、素敵な星空を作りたいんだ。」
「もちろん!ようこそ『ルミナ☆ステラ』へ!」

「…ん?え?ちょ、ちょっと待って下さいレグルス様。3人って、わ、私もやるんですか?」
その時、スピカの横から声がしました。
「…お姉ちゃん、私が可愛くスタイリングしてあげるから心配しないで!」
どこからともなく表れたのは、末っ子のデネボラでした。
「え?デネボラ!?なんでお前がここに!?」
「何でって、わたしお姉ちゃんより流れ星に乗るの上手だもん。皆さん、お姉ちゃん達をどうぞよろしくお願いします!」

こうして戸惑い顔のスピカと、9つの笑顔で始まった新生『ルミナ☆ステラ』。
春の夜空は雲ひとつなく、星々が瞬くのでした。

第三章|冬の炎

第十一話:王宮

「…よし、今日も可愛い!」
リゲルは手鏡をしまうと、すぐに無表情に戻り、いつもの独り言を始めます。
「シリウス…可愛さでは私の足元にも及ばないくせに。せっかく双子を使って衣装まで隠したのにさ。」
窓の外に目をやると、冬の星々がリゲルを懸命に照らしていました。
「あの星の人間達に一度思い知らせないと駄目ね。本当の可愛さっていうのを。」

「あら…眼鏡はどこに置いたかしら?」
冬空の王室では、暖炉の火が赤く揺らめいていました。
「掛けていらっしゃいますわよ、アルデバラン様。」
「あら本当、顔にあったなんて。」
アルデバランはカペラへ、にっこりと微笑むと、窓の外に目を向けます。
「レグルスがシリウスに教えを請うなんてね。」
「レグルスさんはきっと純粋なんですわ。」
「そこが心配なの。無数の星達を束ねるにはもっと"したたか"じゃないと。私が少し教育を…」

その時、王室の扉からノックの音が響きました。

「失礼します。」

リゲルは王室に入るなり、
「アルデバラン様、地球に行ってもよろしいでしょうか?人間達に"本物"を見せてあげたいんです。」
「あら、こういうのなんて言ったかしら。『渡りに星』?『願ったり光ったり』?…まあいいわ。」
アルデバランは軽く手を打ちました。
「リゲル、私達も行きます。カペラ、準備を。」
「では、カストルに馬車を準備させますわ。」

こうして急遽、地球へ向かう事を決めた冬の綺羅星たち。
暖炉の火は風もないのに揺れ、バチバチと妖しい音を響かせるのでした。